ささやかな胡桃パン-海外文学と遊ぶ

主に『海外文学』と『読むこと書くこと』あれこれエッセイ

『密林の語り部』バルガス=リョサ

ラテンアメリカ文学
マリオ・バルガス=リョサ Mario Vargas Llosa
『密林の語り部』(1987)

密林の語り部 (岩波文庫)

密林の語り部 (岩波文庫)

雄弁な語り部であるリョサに感謝。

この『密林の語り部』は、アマゾンを放浪する部族、マチゲンガ族の「語り部」になった青年とその友人(この小説の語り手であり、おそらくリョサ自身)の話である。

語り手の回想の章と「語り部」の語りの章が交互に並ぶ。

語り部の話を熱心に聞くマチゲンガ族のように、僕も熱心にリョサの小説を味わった。彼らマチゲンガ族にとって大切な語り部は、僕らにしてみればリョサのような作家たちである。

私たちと違って、語り部のいない人々の生活は、どんなにみすぼらしいものだろう (p85)

彼らの小説から、人類の歴史を知り、人間のしでかした悪事を知り奇跡を知る。マチゲンガ族の語り部の云うタスリンチやキエンチバコリ、セリピガリは、神であり悪魔であり預言者であり、人間である。

小説のない生活がみすぼらしいとは言わないが、それがあることで豊かになる何かはきっとあると信じている。

とにかく「語り部」の語りの部分が非常に面白い。マチゲンガ族の自然に対するアミニズム的な捉え方と神話が混ざったような話が興味深く、なによりも単純に楽しめる。

虫や動物が何故そこにいるのか。草花が何故そこにあるのか。何を伝えようとしているのか。注意深く耳をすませば、蛍の声を聞き分け、親戚にだってなれるというマチゲンガ族の思想に学ぶところは間違いなくある。