フアン・ルルフォ Juan Rulfo
『ペドロ・パラモ』(1955)
数ページ読むだけで「こ、これは…」と面白さを確信する小説に出会うことが稀にあるけど、このフアン・ルルフォの『ペドロ・パラモ』はまさにそれであった(個人的感覚)。さらにこれは、読み終えた後にすぐさま最初から読み返したくなる小説でもある。
再読すると「おっ」という気付きがさらに重なっていき、この小説の舞台(舞台という表現には違和感があるが)であるコマラという町の虚無にますます吸い込まれていく。そしてまた読み返そうとしてしまう。。何もなく誰もいないコマラに何かを探しにいくのはフアン・プレシアド(ペドロ・パラモの息子)ではなく、僕ら読者である。
ラテンアメリカ文学の先駆けであるこの小説は、小説の執筆に行き詰まっていたガルシア=マルケスの道標ともなったという。『予告された殺人の記録』が断片の重なりという意味で似てるけど、ルルフォの簡素で堅めな文体の方が読みやすいし、好み。でもどっちも好き。
それと、読んでいて思い浮かべたのはイタリアの作家アントニオ・タブッキの『レクイエム』である。

- 作者:アントニオ タブッキ
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 1999/07/01
- メディア: 新書
生者と死者、現在と過去の交わり。厳密には違うんだけど(ネタバレっぽいから書かない)、でも非常に雰囲気が似ていて、これまた好きな小説。
どんな独裁者も権力者もいずれ死者となる。ペドロ・パラモの彷徨う悔恨(その思いがあったとして)の魂を、ルルフォは鎮めたのかもしれない。
因みにフアン・ルルフォが死者となった1月7日は、僕が生者となった日である。そんなん知るかって話ですね、すみません。