ドイツ文学
ヘルマン・ヘッセ Hermann Hesse
『デミアン 』(1919)

- 作者:ヘッセ
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1951/12/04
- メディア: 文庫
若い頃に読んでいれば、非常に刺激的でかつ深く共感したに違いない。若い頃の自分を思い出し、懐かしさを感じてしまうのは僕がオジさんになったからである。
そのときデミアンは、われわれはあがめる神を持ってはいるが、その神は、かってに引き離された世界の半分(すなわち公認の「明るい」世界)にすぎない、人は世界全体をあがめることができなければならない、すなわち、悪魔をも兼ねる神を持つか、神の礼拝と並んで悪魔の礼拝をもはじめるかしなければならない、と言った。-さてアプラクサスは、神でも悪魔でもある神であった。-『デミアン』(新潮文庫)より
アプラクサスは僕らの中に在る。それに気づいてから此の方、ただのオジさんになった今でも悪魔との戦いや葛藤は絶えない。絶えることはないだろう。まあそんなものである。懐かしさとか言いながら、変わっていないのであった。笑。
もしカイン(カインとアベル)が悪ではないとしたら。戦争が悪ではないとしたら。そう考えるのにはとても抵抗を感じてしまうが、起きてしまったことを嘆き悲しみ、それに絶望したとしても、必ず未来には希望の光が見えてくるのだと信じたい。ヘッセのように。
『デミアン』は希望の物語である。